第1章

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   ○●○●○  笑わない店主に、世間の風は冷たかった。  あんなに賑わっていた店も、無表情の店主が接客すれば右肩下がりに客足は減っていった。今では常連の客が数人来る程度である。  味で勝負できないことが、メロは悔しかった。  せめて町中であれば……。そんなどうしようもない思いがメロの胸を占める。  町中のパン屋は賑わっているという。そう考えて、メロははっと首を振った。大事なのは味のはず。ちゃんとやっていれば結果はおのずと付いてくる。  メロは閉店準備をしようと立ち上がった。  カランカラン 「あ……」  店に入ってきたのは、ニコルだった。 「やぁメロ。まだいいかな?」  にこやかに言うニコルに、メロは目を泳がせた。
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