第1章

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「え、えぇ……」  そんなメロに気付いてか気付かずか、ニコルはかごとトングを取ってパンが乗ったトレイを見て回っている。    ○●○●○  ニコルは不思議な人だった。  ある日店にやってきて、店内を見渡すと、メロンパンだけを十個買って帰った。それだけでもインパクトは十分なのだが、次の日から開店とほぼ同時に来るようになった。  最初は挨拶だけ。次は天気の話題。徐々に世間話をするようになって、今では笑えと遠慮なく言うようにまでなった。 「そんなに食べたら太るわよ」  一度そう聞いてみたことがある。二回目に来たときから、ニコルは変わらずメロンパン一個とその他のパン六個を買っていっている。  ニコルは一瞬ぽかんとしたあと、合点がいったかのようににっこり笑った。 「あぁ、これはお師匠様の分もなんだ。五個が僕の分。昼ごはんにパン七個はさすがの僕にも多いかな」  メロもパンはたくさん食べる方だが、それでも五個とは一般的には多くないだろうか?
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