夜の繁華街

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「確かに、式守は勉強不足ではあるな」  言って、懐から折り畳みナイフを取り出すと、その先端を鎌鼬の亡骸へと向ける。 「鎌鼬は通常、集団で行動する」  言って、一歩近づく。 「その数は、最低でも三匹だ」  刹那、鎌鼬の亡骸がピクリと動き、スッと起き上がる。  否、起き上がったのは鎌鼬の亡骸ではなく、亡骸を隠れ蓑に二人の様子を伺っていた三匹目の鎌鼬であった。  先程の二匹とは異なり、得物は鎌でも鈍器でもなく、鋭利に研ぎ澄まされた無数の爪。  低い唸り声と共に上空へと跳躍すると、修市へと向かって、鋭利な爪で斬り裂かんと、両腕を振り下ろした。  振り下ろされた爪は修市の眼前へと迫り、そして――。 「……っ!!!!」  寸での所で、ピタリと動きが止まった。 「っ!! っ!! っ!!!!」  自身の身に、何が起こったのか理解できず、動揺の色を浮かべる。  しかし、それも一瞬の出来事だった。  その場で静止した鎌鼬の喉元を、修市のナイフが深々と抉り、辺り一面に鮮血が吹き上がる。  パクパクと口を動かしながら何かを訴えかけようとした鎌鼬だったが、その瞳がグルンと裏返り、白目を剥いたまま、絶命した。 「雉も鳴かなければ撃たれなかったものを……いや、この場合は、討たれなかったの方が正しいのか?」  血潮をふき取り、ナイフを懐に戻した修市は、繁華街の方角からサイレンの音が近付いてくるのを確認すると、三匹の鎌鼬の亡骸を避け、裏路地へと歩いて行った。
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