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鎌鼬の一件より翌日、異能対策局本部より招集がかけられた修市は、隣で不機嫌そうな表情を浮かべる彩音の相手をしていた。
「なぁ、式守……」
「五月蠅い。黙れ」
「酷くない? 一応、俺、上司にあたるんだけど」
「関係ない」
声をかけてもこの有り様。
彩音の整った容姿は、不機嫌極まりないといった様子で、とても手におえる状態ではなかった。
と、いうのも、昨日の鎌鼬の処分を他の対策局の隊員達に連絡に行ったのは良いが、路地裏に戻ってみると、修市の姿は何処にもなく、かわりに、鎌鼬の亡骸の数が一匹増えていた事を確認。
増えたもう一匹の亡骸の痕跡を調べてみれば、刀とは異なる鋭利な刃物で喉元を深々と斬り裂かれており、残りの一匹を殺めた人物が修市である事実に辿り付くのに、そう時間はかからなかった。
あの時、鎌鼬は二匹ではなく三匹で行動していた。
そして、その事に気付かなかった彩音のかわりに、修市が残りの一匹を駆逐した。
ならば、あの時、此処に残るといった理由は――。
その後、修市がいない事に困惑した彩音は、近場を小一時間捜し回った挙句、見つける事が出来ず、寮に戻ってみると、ソファーの上でスヤスヤと気持ち良さそうに居眠りをしていた修市を発見。
こいつ、私が彼方此方捜し回っている間に居眠りしやがって……。
見つかった事に対する安堵よりも、路地裏で待っていると言っていた筈の人物が寮のソファーで気持ち良さそうに居眠りしていた事に対する怒りが勝り、それが原因で、彩音は不機嫌となったのだ。
無論、彩音が不機嫌なのは、他にも理由がある。
自分では殺生はあまり良くないと言っておきながら、自分もしっかりと鎌鼬を殺めているではないか。
殺生はあまり良くないと言いながら、自身は鎌鼬を殺め、更に自分を置いて持ち場を離れ、寮のソファーで居眠りをしていた行為に、彩音のイライラを大きく募らせたのだ。
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