異能対策局 本部

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「なぁ、式守。どうしてそんなに機嫌が悪いんだ?」  局内に入ってもイライラが収まっていない彩音に、修市が溜息交じりにそう言う。 「……なぁ、日野本。自分の胸に手を当てて良く考えろって言葉を聞くけど、日野元もそれをやってみれば分かるんじゃないか?」  ジトッとした目付きで、修市を睨み付ける彩音。 「ん? 自分の胸にか?」  彩音の言葉通り、自身の胸に手を当て考える修市だったが、暫く考えた後に、何も思い浮かばなかったのか、残念といった表情で、首を左右に振って、断念した。 「悪い。全然分からなかった」 「……ほぅ」  修市の言葉に、ジトッとした視線が更に強くなり、彩音の全身から稲光が発生し、バチバチという音が発せられる。 「ちょ、ちょっと待て!! 悪かった!! 俺が悪かったから!! 昨日の件。昨日の件で怒っているんだろ。俺が持ち場を離れた事。寮で居眠りしていた事。後は……あぁ、あれだ。獲物を一匹黙って駆逐した事。それに対して式守は怒っている。そうだろ?」  周りの局員達が慌てて避難するのを見て、流石に拙いと思ったのだろう。  彩音が不機嫌である理由を正確に述べ、その上で謝罪の言葉を述べる修市に、彩音は自身の全身を覆っていた稲光を消し、元の状態へと戻った。  相変わらず、怒らせると見境がない。  修市はそう思った。  彩音がまだ、異能対策局に所属する以前より、上層部より、彼女の面倒を全面的に見る様、指示を受けていた。  資料の上では、優秀な成績ではあるが、性格に難があり、とてもじゃないが、他の班長では手に余るとの事。  周りの班長達が白旗を上げてゆく中、最後に白羽の矢がたったのが、修市が所属する部隊であったのだ。 『犬は犬でも狂犬の類だ』  鎌鼬と遭遇した時に発したこの言葉も、元々は本人が自称したのではなく、他の隊員や局員達が、彩音の事を狂犬と称していた。  相手が誰であろうと、例え上官であろうとも、気に食わなければ見境なく噛み付く狂った犬。  その狂犬っぷりは修市の部隊に所属して尚変わらず、気に入らない事があれば、修市であろうと容赦なく噛み付いてくる。  今回の件がいい例だ。
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