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「はっ……安い挑発に乗りやがって。他の妖もあんたと同じ様に短絡思考だったら良いのによ」
妖の言葉とほぼ同じくして、ロングコートを羽織っていた存在の全容が明らかとなる。
フードの奥から覗いた顔はイタチの容姿。
よく見ると、鎌を握っていた手も毛で覆われており、鎌を鮮やかに彩っていた液体は、赤黒く変色している。
それが、元は人の血液であった事に気付くには、そう時間はかからなかった。
「その容姿……鎌鼬(かまいたち)か?」
「あぁ、そうだ。それが私の総称だ。そしてそれが、貴様を斬り刻む妖の……っ!!」
自身の存在を把握された鎌鼬が、自身の得物である鎌を、眼前に迫る彩音へと振るうも、それよりも速く、彩音の刃が鎌鼬の胴を捉えていた。
「まぁ、私には関係の無い事だ……っ」
真一文字に振るわれた刃が、鎌鼬の胴体を薙ぎ、ロングコートと共に二つに裂ける。
それと同時に、彩音は一つの違和感を感じた。
手応えがない。
相手が妖とはいえ、人間と同じように肉体を有する妖怪は、その区別なく、人間と同様に視覚だけでなく触覚も認識する事が出来る。
だが、目の前の鎌鼬は、胴体を断ち斬ったというのに、その感触が全くなかったのだ。
文字通り、上半身と下半身に斬り裂かれた鎌鼬。
次の瞬間、鎌鼬の口元が歪に歪んだのを、彩音は視認した。
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