夜の繁華街

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(とはいえ、危なかった。少しでも判断が遅れていれば、本当に私の身体が二つに斬り裂かれていた)  目論見通り欺き、振るった小刀の重みで、彩音のバランスを崩す事に成功した鎌鼬だったが、彼女が持つ小刀に、一瞬身震いする。  それもその筈。  彩音が所持していた小刀は、妖を斬る為だけに存在する妖刀と称される一振りだったのだ。  妖の肉体は、人間とは異なり強固に出来ており、人を容易く肉片に変える得物をその身に有している。  妖がこの世界に生を得た当初、その圧倒的な力の前に、人間は狩り取られるだけの生き物だった。  しかし、ある一匹の妖の裏切りにより、人間は妖を打ち倒す術を手に入れた。  それこそが妖の体の一部を武器に変化させた妖刀であり、長年に渡って、それに類似した力を人間達は数多く輩出したのだ。 (だが、妖刀とはいえ、体制を崩した状態で私達二匹を相手にする事は出来ない) 壁伝いに跳躍する事により、体勢を崩した彩音の死角となる背後まで移動した鎌鼬と、正面から襲い掛からんとする鎌鼬。 「バラバラに斬り刻んでやるぜ!!」 「ボッコボコにぶっ潰してやるぜぇ!!」  片方を防ごうとも、もう片方の一撃をまともに受けてしまう形となる。  防ぎ様の無い一撃に、為す術は無い。  まさに絶対絶命のピンチ。  にも関わらず、彩音の表情からは焦りの色が浮かぶ事は無かった。  何故ならば、鎌鼬の二匹もまた、大きな勘違いをしていたからだ。 「この程度で、私を討った気になってんじゃねぇよ」  刹那、彩音の体より眩い光と共に、バチバチと稲光が発せられる。 「げげっ!!」 「ま、まさか貴様は!!」 「忘れたのか? 私は異能対策局の犬だぞ」  彩音より発せられた稲光が全身を包み込むと同時に、彩音の身体が高速を超えて動き出す。  バランスを崩した状態から身を捻っての回転斬り。  咄嗟に防ごうと得物を構えた正面の鎌鼬を得物ごと断ち斬り、その反動を利用して背後より迫っていた鎌鼬へと身を捻る。  刹那、鎌鼬と目が合う。 「きさ……ま……ま、まさか……異能……っ」 「異端の能力を、他者とは異なる能力を身に付けた奴等を相手にするのは、同じく異端の能力を、他者とは異なる能力を身に付けた奴等だけだ。まぁ、例外も存在するんだけどな」
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