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「それでは、板井検事。冒頭弁論をお願いします」
と、裁判長が言った。
「被害者は、クラブ『butterfly』でホステスをしていた甘利夏樹(あまりなつき)さん、27歳。『まりな』という源氏名を使って働いていました」
「鳴木君、源氏名って何?」
と、希月さんが尋ねる。
「ホステスやホストが名乗る名前のことです。作家のペンネームや、芸能人の芸名のようなものですよ」
俺がそう説明すると、希月さんは納得したようだった。
希月さんはアメリカで心理学を学んだとともに弁護士資格を取得した、いわば帰国子女。そのため、日本のことについて分からないことが多少あるようだ。
「被害者の死因は、アイスピックで心臓を刺されたことによるものです。証拠品として解剖記録を提出します」
『甘利夏樹の解剖記録』
・心臓をアイスピックで刺され、即死。
・死亡推定時刻は、午前9時から午前11時頃の間。
板井検事が袋を取り出した。
「これが凶器のアイスピックです。鑑定の結果、被害者の血液と被告人の指紋が検出されました」
「何ぃ!?」
指紋のついた凶器……がっつり不利じゃねぇか…………。
『アイスピック』
・事件の凶器。
・被害者の血液と被告人の指紋が検出された。
・持ち手の底に蝶のマークがある。
「それだけではありません」
板井検事が言葉を続ける。
「こちらは被害者が事件当日着ていたドレスですが、そこからも被告人の指紋が検出されました」
「えぇ!?」
『被害者のドレス』
・被害者が事件当日着ていた。
・被告人の指紋が付着。
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