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ベンチャー向け雑居ビルで、「村落経済新聞社」と掲げられている入口の看板を確認。
このとても堅そうな名前のオフィスの前で、モナは深呼吸をした。
萱野に村祭りルポのオファーを出したかもしれない新聞社。
アポなしだが、突撃あるのみ。
モナはトントンと扉をノックした。
「どうぞ」
中から声がしたので、モナは古い扉のドアノブを掴んで開けた。
一目で全て見渡せる小さな事務所。
女性ばかり4人いた。
「なんでしょうか?」
「突然すみません。こちらに萱野さんというルポライターに村祭りの仕事を発注していませんでしょうか?」
「は?」
応対した50代の女性はモナの変な質問に不信な表情になった。
「私、こういうものです」
モナは会社の名刺を渡した。
「萱野さんというルポライターを探しています。もしかしてこちらで仕事を発注していないかと思いまして」
必死に頭を下げた。
「ちょっとお待ちください」
女性は奥の席にいる社長兼編集長の箱崎さや子のところに名刺を持っていった。
ネットで写真を見ていたからすぐに本人だと分かった。
いかにもやり手な感じのする美女。
小さいながらも新聞社を経営しているのだから、見た目通りだろう。
箱崎さや子は立ち上がると、「どうぞこちらに」とモナを招き入れた。
マスコミ関係者は広告宣伝部という名前が好きだから、こういう時に会社の名刺は役立つ。
本当はプライベートで使いたくないのだが、今回は萱野の行方を調べる為だと自分に言い聞かせた。
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