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“ヴー” “ヴー” どこか遠くで何かが唸っている音が聴こえる。 「・・・うるさいなあ」 私は不快に目が覚めた。 「フワァァァ・・・」 大きなあくびが出た。 半分まだ寝たままの頭の中。 枕元のスマホは朝6時にセットしていたアラーム音を鳴らしている。 『ああ、OFFにするのを忘れてた・・・』 私は手を伸ばしてそれを止めると、画面を見た。 「・・・」 何度も瞬きし、目を凝らしてみるが、待っている着信はない。 私はスマホを持ったまま、流しに向かった。 鏡の中には目の下のクマが憐れな、まぶたの腫れた女の顔があった。 「ひどい顔・・・」 最近仕事が忙しく、毎日遅くまで残業をしている。 昨夜の帰宅も日付が変わってから。 風呂に入り、寝たのは午前2時。 今は朝6時。 つまり4時間しか寝ていない。 寝付きも浅く、全身の疲れは全く取れていない。 その疲れが顔に出ている。 だが昨日でようやく仕事が一段落。 今日から有給休暇を一週間とる予定だ。 本当は恋人の萱野と一緒に過ごしたかった大切な休暇。 なのに、萱野は現在行方不明。 最後に連絡をとってから3週間が経とうとしている。
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