僕の話

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 …あれは五年、いや春の終わりだったから六年近く前になるのか。僕が十九の時でした。 僕はどうっていうことのない大学の二年生でした。県立校で真ん中ぐらいの成績の僕がちょっと勉強すれば入れた私立です。どうっていうことないですよ。その頃の僕は大学に通う意味を失くしかけていました。 何の目標もなく大学に入って、最初の一年はあっという間に過ぎました。一人暮らしも初めてだったし、もちろん東京の暮らしも初めてだし、バイトも始めたし、気がついたら一年が過ぎていました。二年になった時、何で大学に通っているんだろう、ふとそんな考えが浮かびました。 周りにはサークルに入ったりして、大学生活っていうんですか、はた目には楽しくやっているヤツもいましたが、そんな輪の中に入っていく気はしませんでした。
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