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「えーとですね、コーヒーを…ホットでいいですか?じゃあホット一つ。それとね、BLTサンドと…これだけじゃ足りないから、スパゲッティも食べようかな…じゃあ、このフレッシュトマトのスパッゲッティと…コーヒーにしようかな…うんホット。えっ、セットにするとスープも付くの?あーこれね。じゃあセットにしてもらって、スープはミネストローネで、コーヒーは先にね、すぐ持ってきて」
男はひどく満足げな表情を浮かべるとメニューをウエイトレスに渡した。
僕はこんな男と過ごさなければいけない時間を呪った。
男と知り合ったのはファミレスに入る十分前、ついさっきのことだった。でも、ここ一ヶ月僕をつけまわす視線に気がついていた。
仕事が終わると夜の繁華街へまっすぐに向かう。それが僕の日課だ。そして、赤いハイヒールを履いている女の子に声をかけ、アンケートと称してどこでハイヒールを手に入れたのか、どこで買ったのかを聞く。
毎日毎日、終電まで町の片隅でそんなことをしている僕は確かに変だろう。でも、道行く人は町の風景のように気にはしなかった。
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