僕の話

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僕は覚悟を決めた。 「僕がこれから話すことは大概の人が信じられないような話です。僕は作り話をして人を驚かす趣味とかありませんから、信じられないかもしれないでしょうけど本当の話なんです。ですから、途中で僕の話を否定したり、疑ったりしないでください。思うのは勝手ですが、口に出して言わないでください。約束してもらえますか」  男はさみしくなった頭髪をかき上げながら何度も細かくうなづいた。 「あなたが、そんなバカなとか、嘘でしょとか言ったら、僕は話をやめて帰ります。いいですね」 「分かりましたよ。約束しますよ」  男は百円ライターを手の中で回しながら、少し卑屈な笑みを浮かべて答えた。  僕はコーヒーに砂糖を三袋入れてかき混ぜた。吐き気がするほど甘いコーヒーを二口飲んで空腹をごまかした。 話すしかないんだ。逃げることはできないんだ。 自分に言い聞かせて僕は話し始めた。 街は充分過ぎるほど夜になっていた。
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