永い午睡(ねむり)から目覚めたら

　18になったばかりの春休み、私は人生とはままならないものであるということを知った。

　第一志望だった東京にある美大の合格通知を手にしたその日、父が会社をクビになった。

　その大学に行くために、私はこどもの頃から宗介さんの元に通っていたのだけれど。

　数日間悩んだ末、私は美大へ進むことを諦めた。

　そのことを告げたとき、父と母は心からホッとした顔をした。

　私は、正しい選択をしたのだと思う。

　その証拠に、宗介さんはそれ以上何も言わなかった。