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「カリン」
宗介さんが私の膝の上に頭を乗せ、胎児のようにまるまったままで私の名を呼ぶ。
「宗介さん、なあに」
彼が動かないのをいいことに、私は彼の細い髪の毛をずっと指で弄んでいた。
「明日からしばらく留守にするから」
「旅行にでも行くの?」
芸術家である彼が、テーマを求めてふらりと旅に出てしまうのは今にはじまったことじゃない。
「月末には帰るよ」
宗介さんはパンツのポケットを探ると、この部屋の合鍵を取り出した。
「わかった」
私は鍵を受け取ると、決して失くさないようにハンカチで丁寧に包んで、いつも持ち歩いているポーチに仕舞った。
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