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「宗介さん……、どうして?」
遮光カーテンが閉じられた真っ暗な部屋からは宗介さんの絵も道具も何もかもが消えていた。
暗闇に目が慣れた頃、ようやく部屋の真ん中に何かあることに気がついた。
真っ白い布が掛けられたイーゼルが、ぽつんと一つ立っている。
私はゆっくりと立ち上がると、南側の窓のカーテンを開け、イーゼルの前に立ちその布を剥ぎ取った。
「これ……」
空に架かる大きな虹。
そして、色とりどりのコスモス畑を駆け回る一人の少女。
この少女は、私だ。
そのコスモス畑は宗介さんと初めて出逢った年の秋に、スケッチ旅行で訪れた場所だった。
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