213人が本棚に入れています
本棚に追加
すると、アサトはめんどくさそうな顔をして、ますます不機嫌そうな顔を私に向けた。
「私は実力買われて、プロデューサーに頼まれてこのバンドにきたの。アサトに練習しろとか指図される覚えはない!」
そんな小生意気なことを、つい口走ってしまったため、アサトにまたすごい形相でにらまれた。
「いや…そうじゃなくて…、とにかく…私は、このバンドのメンバーに代わりはないから、絶対にアサトに認めさせるくらいの実力でギャフンと言わせるから。だから……私もっと磨いてもっとうまくなって頑張るから!!」
私は、どや顔をしてズバリと言ってやった。
だけど、アサトはまた不機嫌そうな顔をしながら、顔を背けられて無視された。
「ちょっと!聞いてる??」
「おいアサト、なんか言ってやったら?美春から聞いたけど、昨日練習とかめっちゃ頑張ってたんだってよ」
「俺はメンバーとして認めない」
アサトは改めて向き直ると、冷たく厳しい口調で答えた。
私の勢いとアサトの放つ言葉はあまりにも違いすぎて、非常に気まずい空気が流れた。
私もこのアサトの嘘偽りのない重みのある言葉に気持ちが沈んだ。
「おい…またそんなこと言うなよ…」
「…ただ、デビュー前にこれ以上メンバーが代わっても迷惑な話だ。次に同じように迷惑かけることがあれば、どんな手を使ってでもお前を辞めさせる」
っていうことは、私はなんとか許してもらえたってことだよね!?
ひゃっほーーーー!!ラッキー!!
と、また楽天的な私。
メンバーの一人に確実に嫌われ、先行きは不安だけど、きっといつかはアサトだって私の魅力に気付いてくれるでしょう。
だって私は、恋愛でも友達でも苦労したことなんてほとんどないんだから。
最初のコメントを投稿しよう!