叶わぬ人～難攻不落な彼へのストラテジー～

ヒロインに相応しい運命の出会い

人生一度も挫折を味わったことがなかった私には、就活があまりにめんどくさく感じ、精神的にも耐えられなくて、10社落ちて一切やめた。

「就活なんてどうでもいいー！イエーイ！カンパーイ！」

せっかく自由気ままに学べ、遊べる大学生。残り少ない楽しい生活を、就活の時間に費やすなんてもったいない。たくさんの仲間ともっと交流しようと、毎日のように飲み歩き、どんちゃん騒ぎして楽しんだ。

よくその帰りに渋谷駅で、路上ライブしているバンドのマイクを無理くりに奪って、ストレス発散に好きな演歌を大声で歌ったりした。

行き交う人々が止まって、こちらを興味深げに見ている。 人から注目されて、賞賛の拍手を浴びるのは久しぶりだった。

「あの子めっちゃいい声してんじゃん？誰だろー？」

スマホを向けられて、動画や写メをとられ、くすくす笑っているやつもいたけど。こんなに今みんなの注目を浴びて、人を笑顔にして、楽しませている。

美人で、なんでも器用にできる才能のある私を、なぜ一般社会は選んでくれないのか…。

最初は気持ちよかった人の拍手が、何回か重ねると虚しく感じるようになって、最後は逃げるように去っていった。