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でも、望に小さな変化が起こった。
ある日を境に、俺を安心させるための作りものでしかなかった笑顔に鮮やかな色がつき、望は部屋の観葉植物を前よりも慈しむようになった。
ほんの少しの変化でも、俺たちは気付き合える。
恋をしたんだと、すぐ分かった。
……俺は、望が好きになったその相手を見たいと思った。
タイミングを見計らって、俺が朝の仕事場に連れて行って欲しいとせがむと、望は俺が外に出たいと言ったことを純粋に喜んだ。
疲れ果てた望を癒す存在に興味があったからだったけれど、それを言うことを伏せたのは何か『予感』を感じていたからかもしれない。
シャワーで全てを洗い流してタオルで身体を拭いた後、俺は出来るだけ新しく、清潔な服と下着を身に着ける。
望が仕事から帰宅するまでの間、俺はヘッドフォンを耳に掛けて鼓膜が破れるほどの爆音で、音楽を鳴らし続けた。
それでも夢は頭の中から追い出せず、その一日、淫行に身を委ねるあの快楽に捕らわれ続けた。
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