10人が本棚に入れています
本棚に追加
「……えっと、わたしは……、ううん……。分からない。でも……わたしはどうしたいかだけはある。わたしは逃げない」
「分かったよ。なら、彼に伝えて欲しい。ボクは多分もういないから、そんな時彼は馬鹿だから、案外立ち直った気でいそうだから……。そうだね、こう伝えてくれたまえよ」
明確じゃない言葉が、嫌味を取り込んだ。そうか。わたしはそれを伝えれば良いのかな。だったら、覚えよう。けれど多分それは余りにも酷な言葉で、きっと泣く。必ずとは言わないし思えないので、断言はしないだけでわたしは彼を泣かせなきゃならない。でも、伝える。嫌味を伝える。
「あなたは、わたしが出会ったなによりも残酷です」
「手痛いね。ボクは最後まで巻き込まれただけだから、寛大だと思うよ。それでも、これだけは言える。君は好意で彼に触れるだろう。彼は君に好意を向けないだろう。受け止めてくれないし、自覚がありながらに余りにも暴力的に君を粉砕する。それでも、愛して好くのかい?」
「はい、好きです。愛してます。好きます。愛します。だって上下左右さんはわたしの救世主ですから」
「そうかい」
また世界が千切れる音色が肌を撫でて、目の裏を塗り潰した。
最初のコメントを投稿しよう!