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「ボードゲーム?」
「チェスや将棋、色々あるだろうさ。戦争には現実から遠ざかった統率者と駒がなければ成り立たない。否、統率者の統率者が存在しない駒同士の激突は戦争足り得ない。戦争から願い下げられるよ」
そうなのだろうか。
「統率者の統率者、つまりは将棋で言う王を動かす君たちだね」
成る程。
「で、どうしてボクがそんな事を言うのかは分かるかい?」
頭を横に振った。振れたのか分からず、否定しようと口を動かす。喋っているのか、無論理解出来ない。それでもわたしの意思とやらが伝わったのか、虚空から虚像が舞う。書かれた文章を目で追うようでいて、歌われた言葉に耳を傾けるか如く、特別さもなく異常さもなく、ないない尽くしで本当になにもないので、けれどないとは断言出来ない。なんと言ったか聞いた覚えがある。何処かで、会話かなにかで何時何処かは全く覚えがないのに、単語が浮上する。
「……くう、そう……、空」
存在しない、存在する。どちらでもありどちらでもない。意味はそうだったかもと、わたしは思い出したので、伝えた。伝わったのであろう。虚空から虚像が揺れる。
「そうかい。興味深いものだよ。さて、戦争に付いて答えたのは言うまでもなく、双方の席に統率者の統率者が存在しない場合、なにもないのと同義だからだよ。なら、片方に統率者の統率者がいればどうなると思う? 答えは、虐殺だ。で、君はなにを願う? この状況で、なにを願う? 具体的に願うかい?」
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