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二
「過去と未来と現在の境界線とは酷く曖昧なものでね。しかしどれもが混じる事なく、交わる事もなく、個として存在する。それが何故かは端的な話さ。時間軸自体が間違いであった。それだけの事で、些細で些事で泡沫な問題だ。時に、君はなにを願う。もしも、願いを叶えてくれるならば、四つだけ実現するならば、なにを願うのか」
何時だったか、わたしは分からないのであり、声も曖昧で姿も曖昧で、確かこんな台詞だったなとか思っていたけれど、なんだか違う気もする。だからとかじゃなく、例えば意外にも記憶に新しいのか古いのかも良く分からないもので。思えるのは、そんな旨趣でなにかが言っていた程度のものでありまして。
「何故、四つか。実はただの気紛れなんだよ。変数とでも考えてくれたまえよ。ダイスを振って出た目が四であったとか、指を曲げたのが四本であるとか、或いは浮かんだ数字が死を連想させたなんぞで片付けて構わない。要するに叶える願いが四つなのを知れているならば、願いしか叶えれない、と言う訳さ」
誰だか知らないけれど、わたしの心に直接踏み込むように、斯くてもなくて、なにも踏み込みもしない淡白さと薄気味悪さを肩で切って来た感覚があるので。どうしてか、嫌いではなく、好きでもない。どうでも良い存在、でもない。思い付く当たり障りない装飾された表現で述べるならば、透明な場所を見詰めているみたいだったのかも知れない。それだから、こうして分からないままに彼女だか彼だか、有機物だか無機物だか、喋っているのか閉ざしているのか、別になにもないのか知りはしないし、知れもしない。
「君の戦争の定義はなんだい?」
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