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腰に手を当てて叫ぶと、三つの影が水中から現れた。
「ケラ、ケル、レラ! 三人とも分かってるの!?」
怒られた3匹は表情があるのかわからないはずなのに、どこかしょんぼりしたような雰囲気を見せていた。
黒い黒い肌に、長細い顔。その長い口にはびっしりと並ぶ細かい歯。そして、そこから長く紅い紅い舌が見え隠れしている。
明らかに普通の動物という雰囲気はなかった。
魔物だ。
普通、魔物は人間とは相反する。
共にいること自体許されるような存在ではない。
しかし、目の前の光景は……
「はいはい、3匹とも反省してるみたいなんだからさ、そんなガミガミ言わなくてもいいんじゃないの?」
呆れたようにアレスは言いながら、濡れた上着を乾かすために熱せられている岩場までやってきた。
長く一つに束ねられた亜麻色の髪が風でなびいている。
弟とは正反対に、少し短めの髪をさらに透いているリーアは実に動きやすいそうだ。
と、そこへ……
”グルルルウ!”
先ほどの黒い物体、紫の一つ目に黒い小さい体……そしてコウモリのような皮膜の翼をもった妙な生物が弾丸のように後ろから……リーアに体当たりしていった。
「なっ!?」
「あっ……え?」
バランスを崩した、リーアはとっさに真横にいた弟の腕をつかんだ。
そして、二人は仲良く水しぶきを上げながら水中へと落ちていった。
「ちょっと、グルゥ!!!」
空中にはそれを見届ける二人の腐れ縁である魔物のグルがいた。
おおかた、水を嫌うグルのことだ。さっき水をかぶりそうになったことへの抗議だろう。
森の中は暑さなど忘れるような楽しげな叫び声が響いていた。
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