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グォォァァアアアアアアッ!!
まるで雷鳴が轟いたかのような轟音が、丸く仕切られた広場に響く。
仕切られた先には、観客席と思われる椅子が並んでいるが、そこに観客の姿はない。
古代のコロッセウムを彷彿とさせるその空間の中央には、この空間の主であり、人間の命など一瞬で断つことが出来るであろう巨大な獣が、獲物を逃すまいと深紅の眼を光らせていた。
獣の姿は、まるで溶岩が固まったかのような黒くごつごつとした外殻を身に纏い、頭からは二つの捻れた角が天に向かって伸びている。引き裂かれた顎から覗く牙は白く、真っ黒い獣の身体とのコントラストが、より一層獣の狂悪性を引き立たせていた。まるで大木のような巨大な尾をしならせているその姿は。
神話に出てくるドラゴンそのものだった。
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