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――私の執事は優秀なの。あなたを相手にするのはとっても馬鹿らしいわ。禿げ執事ー、飽きたからもう家に帰りたい。
他家にいる腹の立つ気位が高いアホ――けふ、お嬢様に言い返していました。さらりと口にされる「禿げ執事」が耳に心地よく響きました。
それからというもの、わたくしはお嬢様が執事を呼びかけている可愛らしい姿にキュンとします。
「お腹が空いたわ、禿げ執事」
「少々お待ちください」
お嬢様の好みであるレアチーズには、ブルーベリーソースがかかっています。そうっと飾られたミントの葉が可愛らしいです。
きらきら瞳を輝かせて、デザートを食べるお嬢様。笑顔で見守る執事の姿は、目の保養です。とてもいい天気だから、彼の禿げた部分がよくわかります。
お嬢様を庇われて怪我をした場所が禿げている執事は、育毛やら植毛やらしようと考えたことがあるそうです。
けれど、お嬢様がつまらなさそうに頬を膨らませていたからやめたと聞いたことがありました。それから、べたべた好意を向けられていたのが嘘のように楽になったからだそうです。
なんとも驚きの理由ばかりです。といっても、執事の魅力が半減したと考えているのは愚か者です。
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