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──この男の子……どこかで。
最近、この男の子を見かけたような気がする。
ジッと見る私に、彼は訝しげな表情を浮かべた。
「…なんだよ」
「え、えーっと…なんでもない。助けてくれてありがとう」
お姫さま抱っこの姿勢から地面に下ろしてくれた男子は睨むような目をしていることに気付いた。
この子、あんまり目つきよくないんだな。せっかく美少年で格好いいのに。
どうでもいいことを考えていると、駆け寄ってきたりえるちゃんが声を上げた。
「お、お兄ちゃん!」
「……え?」
首を傾げる私。
もしかして、さっき言ってたりえるちゃんのお兄さん……?
が、コイツなの?
「りえるちゃん……この人がもしかして……」
「夜神聖夜(よがみのえる)、私のお兄ちゃんですッ」
マジか──!!
☆
私は両腕を組んで首を傾げつつ、廊下を歩いていた。
理由は、数分前にさかのぼる。
〈あ──ッ!!!〉
薔薇園に叫び声を響かせた後、聖夜が『うるせえ』と言いたげな目を向けてきたが、重大な事を思い出した私にとってはそれどころではない。
〈の、聖夜!あんた私に会ったことない!?〉
〈……は?〉
〈私、夢で…貴方を見たような気がするの……〉
〈……バカバカしい〉
こちらが思った以上に現実主義者だったらしい聖夜はくるりと背を向けて立ち去ってしまった。
りえるちゃんは私に謝罪の言葉を述べると、慌てて聖夜のあとを追って同じく薔薇園を出て行き、今に至る。
「今時の小学生はクールでドライだなぁ。いや、聖夜が例外なのかもしれないけど…」
──それにしても。
「似てた、よなぁ……」
夢の中に出てきた彼と聖夜を脳内で比較してみる。
夢の方はおぼろげだが、確かに似ていた。
というか、そっくり。同一人物だ。
「『くれあ』…か」
……ん?
そういえば私、聖夜に自己紹介してない……。
そーだよ、自己紹介もしてないのに、初対面で『会ったことある』なんて言い出したらただの頭おかしい子じゃん!
「はぁ…」
自らの失態に溜め息をついた。
その瞬間、頭の中に声が聞こえてきた。
『…の主…我の声が聞こえるか?』
「……え?」
え、何今の、幽霊?
まさか、んなわけないよね?
幻聴だよね、そうだよね。うんそうだ。疲れてるんだな、よし部屋に戻ろう全力で!
この後、部屋まで全力疾走しました。
え?声?
走ってる間も聞こえてきたけど無視した。
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