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──まだかなぁ。
車の窓から見える景色は一向に変わらない。そろそろこの山奥の緑も見慣れてきてしまった。
ハッキリ行って、暇。
「お父さーん。まだ本家に着かないの?」
「もう少しのはずなんだけどなぁ」
私は闇山紅亜(やみやまくれあ)。
今は春休み真っ只中。
この春休みが明けたら、今度小学5年生になる。
そんなこの時期に何故か親戚一同本家に集まらなくてはいけなくなった。
理由は不明だが、顔も知らない他の親戚に会うことになるなんて…ちょっと憂鬱。
後部座席ではぁ、と溜め息をした私に助手席からお母さんが声をかけてくる。
「紅亜、お母さんもお父さんの本家に行くのは初めてなのよ。ちゃんと顔を覚えてもらってから帰るわよ!」
「う、うん…」
この辺の地域一帯が本家である「夜深山(よみやま)」家の土地らしい。
金持ってんなぁ。
ちなみにお父さんは分家でしかも三男。
本家の方々と面識なんて在るはずもなく。
緊張した面もちでハンドルを握るお父さんに若干の不安を感じた。
☆
ブレーキ音と共に車が停車する。
ぱっと外を見れば、目の前には大きな豪邸が。
「うわぁ…何コレデカッ!?」
ここが本家「夜深山」か…ホントに金持ってたわ…。
思わずゴクリと唾を飲み込んだ。本家にも私と同い年の女の子がいるって聞いてたけど…もしかしてお嬢様なのかなぁ。
ど、どうしよう。一般人の悲しき血が…!
1人でわたわたしていると、その豪邸から使用人らしき人たちが出てきた。
「これはこれは…闇山蓮(れん)様、愛桜(あいら)様、紅亜(くれあ)様」
「お待ちしておりました」
「お車はこちらにお止め下さい」
使用人さんたちの指示に従い、車を停めた後、改めて豪邸に向かった。
外観も豪華だったけど、中はもっと華やかだった。
玄関扉を抜ければ、広いホール。
そこには、いかにも名画って感じの巨大な絵が壁に掛けられていたり、明らか高級そうな芸術品が飾られていたり。
極めつけは、天井からキラキラと光を放つシャンデリア。
目に入る家具とかはすべてロココ調で。
なんかもうゴージャスさが爆発してる。
「こちらの部屋にどうぞ。他の皆さんはもう全員お集まりなさってますから」
私たち、一番最後だったんだね…。
ちょっと気まずいながらも、お父さんは部屋の扉を開けた。
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