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指定された部屋のカードキーを渡された後、手荷物を持ち部屋に向かった。
お父さんはシングルで、私とお母さんはダブルだ。
エレベーターで12階まで上がり、目的の部屋に辿り着く。
「じゃ、お父さんはこっちだから」
「うん」
隣の部屋かぁ…ほっとしたような、しないような…。
カードキーを差し込み、ガチャと扉を開ける。
「わぁ…!」
そこら辺に山ほどあるビジネスホテル何かよりも数倍綺麗な部屋だった。
本当に豪華な所だなぁ…。
適当な場所にリュックを置き、お母さんに一言。
「じゃあ…ちょっと探索して来るね!」
「ええ、夕飯前には戻って来なさいよー」
「分かってるよ~!」
お母さんの言葉を聞きながら部屋を飛び出した。
☆
ウィィィン…ゴゥン。
エレベーターで一度1階に行き、外に出る。
「えっと…」
確か、洋館の外にも建物があったはずだ。車内にいるときにチラッと目にしただけだが。
ガサガサ…。
少し草村を掻き分けて進むと、小さいながらも確かに人が往き来しているような小道がそこにあった。
「…この先かな?」
ちょっと進んだら、がらりと雰囲気が変わる。
さっきまでは洋風だった庭も、今ではまるで日本庭園のようだ。
なんでここだけ雰囲気が違うんだろう…?
木漏れ日の中から、向こう側が見え始めた。
☆
「……」
ぴく…。
自分以外には誰もいないその部屋で、不意に男性は筆を止め、さりげなく開くはずのない扉を見つめた。
「……闇……か?」
少し間が空いた後、何者かが空気を揺らさず、直接青年の頭に声を発する。
『…呼んだか? 我が主よ。見たところ、特に用事は無さそうだが…』
「いや…呼んだだけ。 あの子を呼び寄せたのはお前じゃないのか?」
『──さぁ?』
闇は曖昧な返事をし、クスクスと楽しげに笑い声を上げる。
「……最近、忘れかけてたけど、ちゃんと意識しないとね」
『何を、だ?』
黒髪の青年は筆を持ち直し、静かに言葉を紡いだ。
「───お前が“化け物”だって事」
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