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鋼夜さんに小屋の中を案内された私。
外見からして予想していたが、室内はこぢんまりとしていた。
戸棚が1つと、低い小さなサイズの本棚、それと部屋の中央に円形のテーブル。
ちゃぶ台……って言うのかな、こーゆーの。
「ちょっと待っててね。今片付けるから」
鋼夜さんはちゃぶ台の上にページが開いたまま散らばった数々の難しそうな本を腕に抱え、本棚にしまう。
その本棚の中でも一際目を引く本があった。
黒一色で、表紙には絵も写真もない。ただ、英語の筆記体のような文字が金色で書かれていた。
「鋼夜さん、これなんですか?」
「ああ、それはね……『闇聖書』って呼ばれている本だよ」
「やみ、せいしょ……?」
夜深山家に代々受け継がれている本なんだと鋼夜さんは続けた。
へぇーっ、これはちょっと凄そうな本なのかも……。
ぼけーっとその本を見つめていると、鋼夜さんは「欲しいの?」と。
「いいえ、そういうわけじゃ……」
「クレアちゃんのものになるさ、きっとね」
コレも一緒にね。
そう自分の胸ポケットにさしている万年筆を指差した。
鋼夜さんのセリフに再び頭に疑問符を浮かべる。
「じゃ、特別にクレアちゃんに見せるのはここまでだよ。僕と洋館に戻ろうか」
ちぇ、もっと色々見たかったな……。でも鋼夜さんに大人しく従い、小屋を出て一緒に洋館に向かった。
☆
入り口にある大階段で鋼夜さんと別れた後、洋館の探索をスタートさせる。
タタタ……しばらく終わりの見えない廊下を走っていくと、テラスに出た。
花壇には色とりどりの薔薇が花を咲かせていた。
白鳥のオブジェが乗った白い噴水。
白いブランコが風に揺れていて──。
「わぁー、キレイ!」
テラスから直接中庭に出られるらしく、階段を6段ほど降りて中庭に降り立つ。
薔薇のアーチを抜けると、そこは薔薇の迷路になっていた。
テンションのボルテージがメーターを振り切る勢いで上がっていく。
迷路の中央にあった20メートルほどの大きな一本の木を目指して気が付けば走り出していた。
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