紅崎赤子

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   やべぇ。今日赤子さんの誕生日だったのすっかり忘れてた。  今日が僕の嫁である赤子さんの誕生日だと思い出して何も用意などしていない現状。  彼女の親友である友子さんからの誕生日祝いの電報が白いテディベアに抱かれながら届いたことで思い出した。  今の時刻は午後四時。今から準備するにはギリギリ間に合わなくもないが、何から準備したらいいものかと悩む。  ケーキのチョコプレートにお誕生日おめでとうとか一時間二時間で書いてくれるものなんだろうか。料理の準備はどうしよう。手の込んだものを用意したいが、プレゼントも用意したいのでそれもまた難しいかもしれない。そもそもプレゼントについてもまだ何も考えてないし。 「最低限、ケーキくらいは用意したいけど他は……」  あとお酒。赤子さんは底なしのオオトラだから。  料理はやっぱり── 「……茄子の浅漬け?」  赤子さんの大好物だし。  いや、誕生日って感じじゃないのは重々に承知してるんだけどさ。  それでも赤子さんが幸せそうに茄子を頬張る姿を思い浮かべ、頬が緩む感覚を覚える。ついでに茄子の一本漬けを切らずに丸々一本にかぶり付いた時のことを思い出してなんか心が豊かにもなった。 「それはそれでいいとして、いや、何もしてないからよくはないけど」  プレゼントの用意は最優先しなければと思い直す。  去年は「君といつまでも一緒の時を刻んでいきたい」と歯の浮くようなセリフとともに腕時計なんぞをプレゼントしたが、道具を持つということが壊滅的に苦手な赤子さんは時計を二ヶ月で壊してしまった。道具として扱うようなものではなく、ただ身に付けるだけのものをよく壊せるものだと感心したし。むしろあの赤子さんが二ヶ月よく物を壊さずに大切にしてくれたものだと感動さえ覚えた逸品だった。  あと時計を壊してしまったことに凹んで涙目になってる赤子さんが超可愛かった。
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