第1章 泥沼からの反撃

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待ち時間の暇つぶしにはなるような物ぐらいは要求してみようかと思っちまうが、立場を考えればそんな図々しい事は出来ねぇな。 さっきの管理官には悪いが、こればっかりはどうしようもねぇ。 フォトンチェアーに深々と腰掛ける。座り心地は悪くはねぇ。さてさて、肝心の記者がまだ来やしねぇ。 何もせずただじっと待つだけってのは、スナイパーポジションでない限りあまり好きじゃねぇんだが、たまには何も考えず、穏やかに、ただ時間だけが過ぎていくこの感覚に身を預けるのも悪くはない。 今は敵も何もありはしない。ゆっくりと待つとしようじゃねぇか。 時刻は朝の8時前ぐらいか?アークスの監視部屋から出るときにチラっとモニターで確認した時は、たしかそれぐらいの時刻を指していたはずだ。 面談予定時刻は8時30分だったか?ったくこんな朝っぱらからとはいい迷惑だ。 っと愚痴の一つでもこぼしたくなるが、こっちとら今は監視されている身分で、ロクに外も出歩けない状態。 全てが終わったあの日からもう半年近くは経ったが、ずっと箱詰め状態にされていたせいか、身体がひどく刺激を求めていた。 癪な話だが、この人の都合もまるでお構いなしのインタビューが、ちょっとした退屈しのぎになっている。その事には感謝しておこう。 ……半年か、時間の流れってのは恐ろしいもんだな。もうそんなにも経っちまったのか……まったく、色々あり過ぎたな。 本当によ。 っと物思いに考え込もうとした時、タイミング見計らったようにモニターが出現して、さっきのレディキャスト管理官が映し出される。 『……おまたせしました。イザベラ様がご到着されました』 モニターからアナウンスが流れると、フォトン障壁の向こう側にあるドアがスライドした瞬間、黒髪をストレートアップに纏めて、インテリ眼鏡をかけたいかにも生真面目そうな女が慌ただしく入ってきた。 ふむ…今日のファッションは黒のウルスラスーツか。 生真面目な外見にピッタリとマッチしてるじゃねぇか。 しかし何をそんなに急いできたのか、喘息かと思えるぐらいに息を切らして、しきりに肩を上下させて深呼吸を繰り返している。
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