第1章 泥沼からの反撃

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『…はぁ、はぁ……す、すいません!……はぁ…お、おまたせしました!』 『面談予定時刻にはまだ余裕があるだろ、何をそんな急いで来たんだ?』 『…へ?…………あ!?』 俺の言葉に腕時計を確認すると、なんとも間抜けな表情を浮かべる。 『あ、あはは…はぁ…み、見苦しい姿を見せてしまって…はぁ…す、すいまーー』 『息を整えてから喋れ、別に急かしゃしねぇよ』 苦し紛れに愛想笑いを浮かべて、インタビュー相手の目の前でゆっくりと深呼吸をして必死に息を整えている。シュールな光景だ。 生真面目な外見とは裏腹にどこか抜けている奴なんだがな。 敏腕キャリアウーマンと思って話しかけたら、確実に中身に面食らっちまう程拍子抜けしちまうほどのもんだ。人間、外見で判断しちゃならねぇってことだな。 ようやく落ち着いたのか、一息つけたところで向こうもフォトンチェアーに腰を掛ける。まったく慌ただしいもんだ。 『あぁ、コホン!…改めて、見苦しいところを見せてすいません』 『気にしちゃいねぇよ。んで、何をそんなに急いで来たんだ?』 『え!?…あぁ、その。あなたとのインタビューが楽しみで、それで…時間に余裕を持って早めに向かおうとしたのですが見事に寝過ごしちゃいまして……あはは…』 別に遅れてるわけじゃねぇのに寝過ごしたって言うのか?本人は照れくささを誤魔化すように愛想笑いを浮かべているが、まぁいい。 茶々入れて反応を見るのも面白ぇが、俺とのインタビューを楽しみにしていたってのなら、ここは無粋なツッコミを入れず話を進めた方がいいか。 『…で?…どこまで話した?』 『え?…あぁ!え~っと!……武装したスーツ姿の集団に捕まった、という所ですね』 いきなり話の話題を切り替えた事で一瞬あたふたとするものの、すぐに表情を切り替えて、記録用モニターを表示させると前回の区切りの部分を示す。 切り替えが早いのはいい事だ。抜けている部分はあるがこの辺は評価に値出来る部分だな。 さて…そこから先の話か。 『……ふむ……その後か…』 思考を巡らせ、ゆっくりと過去の記憶を引っ張り出していく……………… 武装した集団に拉致され、しこたま殴られて意識を失ってからどれぐらいの時間が経ったか分からねぇが、目が覚めた時にゃ、暗いうえにロクに前も見えやしねぇ、うすっ気味悪ぃ場所だった。
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