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袋叩きにされた痛みがまだ残ってはいたが、意識がちょっとずつ覚醒していって、ようやくまともに思考も張り巡らせられるようになって、とりあえず自分がどういった状況に置かれているのか確認する。
……どうやら俺自身は今、小汚なく錆び付いた拘束用椅子に、服も取り上げられインナーパンツ一丁の状態で、両手首と両足首を縛られ貼り付けにされているようだ。
意識は割とはっきりしていても、体にまだ力が戻らないせいか、身じろいしてもまったくこの拘束用椅子から抜け出すことが出来なかった。
なす術もなく可能な限り首が動かせる範囲で見渡しても、今いる場所が薄暗くて無機質な小さな部屋という視覚的情報しか入ってこなかった。
しかし今こうして生きているという事は、どうやら始末するために俺を拉致したというわけじゃないようだな。
あの時、俺を拉致した武装集団も、武器での攻撃をしかけてこなかった。どうも腑に落ちなかった。俺が生きている事を良しとしない奴にとっては、真っ先に俺を始末したいだろうに。
だからこそ、あの時変に反撃せず、あえてこうして拉致られてやったというわけだ。
とはいえ、あの武装集団の野郎共、意識を刈り取ろうと人の頭ばっかり集中攻撃しやがって、クソッタレが…まだ痛みが引きやしねぇ。
頭の中に鐘が鳴り響いてる感じだ。
まぁそれはなんとか我慢するとして、俺をこうして生かしたまま拉致したという事は、俺自身に何かがあるからだろう。
それを知りたいと思っている奴が、顔を出してくれるといいんだが。目が覚めてからというもの、状況に何の変化もありゃしねぇ。
さてどうしたもんか……と考えて矢先。背後から遠のりにだが音が聞こえてきた。
気色悪いほどに静まり返っているせいか、たしかにはっきりと聞こえた。
……足音だな……徐々に近づいてきてやがる。
……近づいてくるにしたがって分かったんだが、どうやら1人じゃないようだ。
……足音が止まった。
その瞬間背後からドアがスライドする音と同時に、僅かな照明光が差し込んできた。どうやら俺のちょうど後ろ側にドアがあるようだな。
この部屋の出口に関してはわかった。
最も、今はそれが分かったところでどうする事も出来ねぇがな。
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