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「ただいま。」
そう言いながら和風の戸を開くと、黒い物体が私目掛けて飛びついてきた。
「おかえりなさいぃぃぃ!」
「隆菜暑苦しい」
そう言いながら避け、荷物を自室に置いて広間に出た。
「おかえり青稀。」
ゲームをしながら私に声をかけるのは隆菜の兄。葉紅だった。
葉紅兄妹は私の従兄弟で、ここに住まわせてもらっている。
いや、孤児とかじゃない。親もいるし兄もいる。
なら、なぜこの家に住んでるのか。
それは親が育児放棄をしたからだ。
いや、ちゃんと兄は育てられてるらしい。
何故私が育てられなくなったか。
『私より兄が優れているから』という至って単純な理由だ。
私はバカで要領が悪くてその上親に似てしまってブサイクだ。『そんな事ないよー』とは言われるが所詮お世辞だ。
一方、兄は成績優秀。甲子園常連の梁瀬高校野球部のエースでおまけに顔もいい。スポーツはある程度できるが唯一できない…いや、苦手なのは短距離だ。見た目の割に足が遅くて大変らしい。しかし長距離は毎回1位らしく以前母に褒められているのを聞いた事がある。
まぁ。私には関係のない事だ。
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