第1章

2/21
前へ
/21ページ
次へ
「ただいま。」 そう言いながら和風の戸を開くと、黒い物体が私目掛けて飛びついてきた。 「おかえりなさいぃぃぃ!」 「隆菜暑苦しい」 そう言いながら避け、荷物を自室に置いて広間に出た。 「おかえり青稀。」 ゲームをしながら私に声をかけるのは隆菜の兄。葉紅だった。 葉紅兄妹は私の従兄弟で、ここに住まわせてもらっている。 いや、孤児とかじゃない。親もいるし兄もいる。 なら、なぜこの家に住んでるのか。 それは親が育児放棄をしたからだ。 いや、ちゃんと兄は育てられてるらしい。 何故私が育てられなくなったか。 『私より兄が優れているから』という至って単純な理由だ。 私はバカで要領が悪くてその上親に似てしまってブサイクだ。『そんな事ないよー』とは言われるが所詮お世辞だ。 一方、兄は成績優秀。甲子園常連の梁瀬高校野球部のエースでおまけに顔もいい。スポーツはある程度できるが唯一できない…いや、苦手なのは短距離だ。見た目の割に足が遅くて大変らしい。しかし長距離は毎回1位らしく以前母に褒められているのを聞いた事がある。 まぁ。私には関係のない事だ。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加