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いったいどれくらいそうしていただろう。
おれは意を決して祐子に向き直ると、思い切り唇を重ね合わせた。
祐子は一瞬躊躇したが、何かをふっきるように強く唇を押しつけてきた。
ふたりは長い間唇を吸いあった。こんなことをしたのは初めてだった。
「ねえ、ほんとにどうしたの?」
祐子はおれの目をのぞきこむように聞いた。
おれは祐子からすこし身を離すと、深く息を吸い込んだ。
「祐子、お願いがある」
黒い泉のような祐子の瞳を見つめながらおれは言った。
「今ここで、おれとセックスしてくれ」
「え?」きょとんとした後に、祐子は小さく笑った。
「俊くん、変だよ」
答えようがなかった。
「ダメか?」
祐子は長い髪をしばらく触っていた。
沈黙のあと、やがて祐子は口を開いた。
「……いいよ」祐子はうなずいた。
「きっと今日じゃなきゃいけないんだね」
「理由は聞かないの?」
「うん、いいの」
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