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「俊君、起きてる?」
どれくらい時間が経っただろうか。深海のような深い眠りから覚めると、祐子の声が耳元でささやいた。
「うん?」
「あたしね、今日風邪気味で会社を休んでいたの」
どうりで顔が赤かったわけだ。
「それでね。俊くんが来る前、わたし夢を見ていたの」
「どんな夢?」おれは祐子の髪を指に絡めながら聞いた。
「黒い闇がわたしに迫ってくるの。真っ黒い闇。それに引きずり込まれてわたし、消えちゃうの」
突然祐子はおれの胸に顔を埋めた。
「怖かった。だから俊くんが来てくれたとき、すごく驚いたけど、うれしかった。闇からわたしを助けに来てくれたんだって思った」
おれははじかれたように起き上がった。
「祐子、今日って何日だ」
「え?」
「いや、今日じゃない、明日だ。明日の予定は?」
「明日は俊くんとデートの日だよ」
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