第1章

2/17
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
……おまえは、3時間後に、死ぬ…… まだ日差しのなかに暑さの残る、9月の休日のことだった。 おれは朝から人気のない公園のベンチに座り、ぼんやりとしていた。 そんな時、声が聞こえた。低く、冷たい声。 確かにおれに向かって発していたようだった。 おれが、死ぬ? 顔を上げると、おれの目の前に闇が立っていた。 体つきは人間のそれに似ていたが、見上げるほど大きかった。 上から下まで全身黒ずくめの衣服に身を包み、肩には鎌を担いでいる。 顔は影に隠れていたが、目だけが異様に光っていた。 どう見ても、死神しか見えなかった。 声の主はこいつらしかった。 「あんた、死神か」 我ながら間抜けな問いかけだった。 「……ご名答」 金属のすり切れるようないやな声だった。 「……おまえは、3時間後に、死ぬ」 死神はもう一度、そう言った。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!