第1章

3/17
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
「まだ死ぬ気はないんだけどね」 からからに乾いたのどから、おれは声を絞り出す。 「残念ながら、おまえの死は決定事項。変更は不可だ……」 3時間後か、腕時計の針は午前11時を指していた。 「死因は?」 「いえない」 死神は木の枝の様な指をおれに差し向けると言った。 「ただし、ひとつだけおまえの望みを叶えてやろう」 「なぜ、死ぬとわかっている人間の望みをかなえる?」 おれは死神に聞いた。 「この世にいろいろと未練を残されると困るのでね。それに望みを叶えてやることは私にとってもいいものだ」 「死神にも慈悲心があるとはね」 死神は頬を歪めた。たぶん微笑んだつもりなのだろう。 「……タイムリミットは3時間。望みはひとつだ」
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!