3人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
思案げに写真を見ていた死神はぼそりとつぶやいた。
「おやすいご用だ」
おれは目を見開いた。体が小刻みに震えるのがわかった。
息を吸い込んでから言った。
「そんなこと、出来るわけがない」
出来るはずはない。なぜなら―。
「この女、すでにこっちにいるようだ」
おれは息をのんだ。
「名前は藤川祐子、23歳」
死神の口元がまたゆがんだ。
「一カ月前、交通事故による全身打撲で即死」
「やめろ!」おれは耳をふさぎ声を上げた。
全身から力が抜け、その場にうずくまった。
「祐子……」
あれ以来、片時も頭から離れない忌まわしい記憶が、激しくフラッシュバックする。
太陽の照りつけるアスファルト。真っ赤な血。
人々の怒号。サイレン―。
最初のコメントを投稿しよう!