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ちょうど一カ月前。
休みのたびに会うことにしていたおれたちは、その日もいつもの場所で会うことにしていた。
交差点の一角にある休憩スペース。大きな銀杏の木の下が待ち合わせ場所だった。
先についたおれは、通りの向こうの人の流れに目をこらしていた。
日差しが強い日だった。
通りの向こうで信号待ちしている人のなかに祐子を見つけた。
おれは手を振った。
「俊くん」
おれに気づくと、祐子は横断歩道を足早に駆けてきた。
そのとき、轟音とともに視界をなにかが横切った。
時速100キロ近い鉄の塊、暴走したワンボックスカーだった。
そいつは信号を無視して歩道に飛び込むと、祐子の身体に激突した。
目の前の光景が激しくゆがんだ。何が起こったのか理解できなかった。
祐子の華奢な肉体は道路の上に投げ出され、不自然な形に横たわった。大量の血がアスファルトへと流れ出た。
おれは、あらんかぎりの叫びをあげた。祐子へと駆け寄り、体に取りすがった。
つい数秒前まで生きていた祐子は、無残な肉の塊と化した。
おれは気が狂ったように叫んだ。
声が涸れはてるまで獣のように叫び続けた。
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