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いつのまにか眠っていたようだった。
ベンチから身を起こすと、まるで時間が止まったように、物音がまったくしなかった。
おれはのろのろと立ち上がり、ゆっくり公園から街へと歩いていった。
様子が明らかにおかしかった。
人一人、いや車一台すら存在しなかった。
街全体が色を失い、巨大な牢獄のように静かだった。
「夢……? いや、まさか」
おれは小走りに駆けながら、周囲を見回した。
完全な沈黙が街を支配していた。
この世界のなかで、動いているのはおれだけのようだった。
死神は望みを叶えるといっていた。
この世界はなんだろう。
本当に俺だけしかいないのか?
祐子。脳裏に彼女の顔が浮かんだ。
行こう、祐子のいる街へ。
おれは走った。無我夢中で走った。
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