第1章

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どれくらい走っただろう。時間の感覚が欠如していた。 やがて祐子の家にたどり着いた。 全身から汗が吹き出した。 祐子は二階建ての住宅に両親と暮らしていた。清潔でおとなしい祐子の性格そのままの、きれいな家だ。何度も来たことがあった。 周囲は相変わらず色を失い、なんの音もしなかった。 おれは玄関のノブに手をかけると、あっけなく扉は開いた。 「祐子!」思わず声を上げた。 玄関からリビングへ行くが、人気はない。 「祐子!」もう一度叫んだ。 「俊くん?」 かぼそい声が確かに聞こえた。全身がかっと熱くなった。 おれは二階へ通じる階段を駆け上がった。 彼女の部屋のドアを乱暴に開けると、そこに祐子がいた。 ベッドから半身を起こして、こちらを見ていた。 おれの胸は驚きと喜びに満たされた。 自然と涙がこぼれ落ちた。 なぜ、死んだはずの祐子がここにいるのだろう。 おれにはまったく理解できなかった。
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