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どれくらい走っただろう。時間の感覚が欠如していた。
やがて祐子の家にたどり着いた。
全身から汗が吹き出した。
祐子は二階建ての住宅に両親と暮らしていた。清潔でおとなしい祐子の性格そのままの、きれいな家だ。何度も来たことがあった。
周囲は相変わらず色を失い、なんの音もしなかった。
おれは玄関のノブに手をかけると、あっけなく扉は開いた。
「祐子!」思わず声を上げた。
玄関からリビングへ行くが、人気はない。
「祐子!」もう一度叫んだ。
「俊くん?」
かぼそい声が確かに聞こえた。全身がかっと熱くなった。
おれは二階へ通じる階段を駆け上がった。
彼女の部屋のドアを乱暴に開けると、そこに祐子がいた。
ベッドから半身を起こして、こちらを見ていた。
おれの胸は驚きと喜びに満たされた。
自然と涙がこぼれ落ちた。
なぜ、死んだはずの祐子がここにいるのだろう。
おれにはまったく理解できなかった。
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