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「虫取りですか?」
笑顔がさわやかなイケメンに、
「ええ・・・まあ」
曖昧に笑って誤魔化した。
ハッキリ言って、虫は嫌いだ。
何か用なのか、もの言いたげな様子の彼に眉をひそめる。
「あの・・・少しお聞きしたい事が」
わたしの顔と虫取り網を交互に見比べ、困惑しながら彼が言う。
(・・・やっぱり!)
わたしはすぐにピンときた。
この人・・・わたしの愛するはげちゃびんを探してるんだ!
じゃなきゃ平日の真っ昼間から、ウロウロしてるのなんておかしいじゃない。
自分だって平日休みのクセに、棚に上げて人さまを悪く思う。
虫取り網の取っ手を強く握りしめ、彼をきつく睨みつけた。
丁度そのタイミングに、
♪幸せ~つかめ~ラッタッタラッタッタ♪
またあの歌声が。
住宅街の、直線のこの道は。
前か後ろから来ると決まっている。
(どっちだ---っ!?)
道路に横向きに仁王立ちして、左右に目を配りながら身構える。
(---右!)
駈けて来る足音から推測して、右方向に向き直り網を構える。
イケメンのことなんか頭に無かったけど。
「やっぱり!あなたも狙ってたんですね!!」
鼻息荒く、彼がわたしの前にせりだした。
「譲らないわよっ!」
「こっちのセリフです!」
「賞がかかってんのよっ」
「俺は大口の契約が!!」
ギャーギャー言いながら、欲望むき出しにいがみ合い、牽制し合う2人。
そこに。
♪行くぞ~つかめ~ラッタッタラッタッタ♪
呑気な歌声が近付いてきた。
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