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♪幸せ~つかめ~ラッタッタラッタッタ♪
出勤中、朝っぱらから能天気な歌声がして、イラッとしながら振り返った。
「ん?」
そこには誰も居ない。気のせいだったのかと首を傾げながら、再び駅に向かって歩く。
♪行くぞ~つかめ~ラッタッタッタ♪
まただ。振り返ろうとした瞬間。
足元を何かが猛スピードで走りぬけて行った。
「ネコ?犬?」
朝日に反射して、眩しい位に輝いているナニカ。
光と、白い布。
過ぎ去った後ろ姿で確認できたのは、それだけだった。
不思議に思いつつも、特に興味も無いのですっかり忘れていたのだけれど。
後日。
♪幸せ~つかめ~ラッタッタラッタッタ♪
忘れた頃に聴こえた歌声。
「まただ」
今度は振り返ってしばらく待ってみた。
犬猫サイズのナニカを見つけようと、目を凝らしていたら。
♪行くぞ~つかめ~ラッタッタラッタッタ♪
こないだよりは格段に遅いスピードの、ソレを見ることが出来た。
「・・・人形?」
シルバニアなウサギの家族サイズの、ソレがトコトコと走って来る。
2頭身。
ギリシャ神話に出てくるような、ひらひらの白いワンピースのような服。
そして朝日のように見事な金の髪・・・前髪だけ。
♪ラッタッタラッタッタ♪
満面の笑顔で近付いてくるソレを、
「なに、コレ」
なんなく屈んでひょいと摘みあげて、後ろに引っ繰り返して見てみたらば。
「ぶはっ」
前髪は見事な金髪なのに。何故か後ろは・・・
「ハゲじゃん!」
ツルッツルにハゲている。
♪おめでとう~幸せを~アナタに~ラッタッタラッタッタ♪
笑顔で歌った瞬間。
「あ」
消えてしまった。
「・・・なんだったの?」
首をひねって、また後日。またあの歌が聴こえて来た。
♪幸せ~つかめ~♪
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