幸運の女神様は後ろがハゲているらしい

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そうして忘れたころになると、ソレは現れた。 捕まえられる日もあれば、あまりの早さに捕まえられない日もある。 ミニチュアサイズから、犬猫サイズまで。 大きさと速さは比例しているようで、小さい物の方が比較的掴まえやすかった。 「ぶっ。かーわい」 ただでさえも苛立つ事の多い毎日の、ひそかな楽しみになっていた。 自分の手の中で、短い手足をバタつかせている様が可愛くて。 ぷっくりとした頬に、ツルッツルの後ろ頭が、可愛くて。 首根っこを捕まえてぶら下げて、つるつる頭を、撫で撫でする。 もーキュンキュンしてたまらない。わたしの至福の時間だ。 「ケータイに吊るせないかなあ」 なんて思ったりするのだけど。 「あ。また消えた」 小さいものほど、割とすぐに消えてしまうのだった。 会えた日は朝から気分が好い。しかも今日は、一つも信号に引っかからずに、出勤できた。 「おはようございます!」 ロッカーで着替えて、キッチンやバックヤードのみんなに挨拶する。 職場のレストランでの出勤の挨拶は、昼でも夜でも『おはようございます』だ。 「蓮花ちゃんおはよう」 キッチンのパートさんたちが、声をかけてくる。 「今日はえらく機嫌がいいね」 「はい。信号に引っかからなかったので」 安い幸せだと思いつつ、気分よく仕事を始める。 パートさん達は、早い人はランチ後の14時に上がってしまう。 ほんの数時間の同僚だけど、みんな良い人で仲良くやっている。 ランチタイム後の休憩中の、雑談がまた楽しい。 「・・・幸せの女神さま?」
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