一章とかつけるけど短編ですから。

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 夏姫と別れた竜一と遼平はパトロールも兼ねて三芳学園へと歩いていた。この時間の商店街はそれぞれの家庭へと急いで歩くサラリーマンや夕飯の材料を買いに来ているであろう主婦、公園で遊び帰りの少年達が笑いながら、竜一達の横を通り過ぎていく。街灯が沈んでいく太陽に別れを告げるように辺りを照らし始め、夜が近付いているようだ。  この時間になるとどうも家に帰りたくなる。遼平は夜空を見上げた。ここでは星は見られないようだ。やっと見つけた星と思ったものは点滅をしていて飛行機だった。  竜一と遼平は高知県出身で遥々この神奈川県までやってきたのだ。今は三芳学園の寮で二人過ごしている。  遼平は竜一の背中を見つめた。自分よりも一回り小さい彼だが背中はいつもよりも大きくたくましく見える。不思議なものだ。しかし、この背中に何度救われたことか。  ――そうだ。いつだって竜一が助けてくれたんだよ。  遼平は薄く笑みを浮かべた。 「竜一」 「なんだよ」 「呼んだだけ」 「お前はカップルになったばっかの彼女かっ」  そっと竜一の隣に寄り添い、遼平は彼の手首を軽く掴んだ。竜一はそれを振り払わずにそのまま歩いていく。 「にしても、最近増えたな」 「体重が?」 「ちげぇよ。うちの学園の生徒を襲う輩がだよ」  確かに、遼平はあちらこちらに目をやる。店と店の間の暗がりに何人かの中高生が見えた。遼平達とは違う制服を着ている。ガラの悪い彼らは遼平達をギラリと睨んでいる。今にも襲ってきそうだ。遼平は腰にさしてある木刀を軽く握った。  近頃、隣町の不良学校生がこの町に訪れ、三芳学園生徒を襲ったという事件が多発している。しかし、隣町は隣接している町との交流を断絶して人の出入りを制限しているため、滅多にこの町を訪れることはない。理由は何にせよ、この町を徘徊する隣町の人間はある意味不法侵入だ。  しかしなぜそのような事が起きているのかよくは分からない部分が多い。ただ、金の持っていそうな人間ほど襲われそうになっているのは確かだ。風紀委員会としてそれは見逃すことはできない。
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