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だが問題なのは人数が少ない分、助けられないということも多々あることだ。学園内最強とも言われる遼平がいたとしても防げるものも防げない。尚且つ多々増えているということはそれだけ多発、そして同時というケースも増えてきているということだ。手口が厭らしいというかなんと言うか、これでは風紀委員会の評判も下がってしまう。学校幹部とは面倒なものだ。
「あー、風紀委員会めんどくせぇー!」
「……!」
竜一が背伸びをした。背伸びをしている割には左腕が妙な位置で止まっている。遼平は竜一の左腕を掴み、そっと優しくその腕を下げた。ビクッと左肩が小さく跳ねる。ある場所を通過した時竜一の眉間に深く皺が寄った。
竜一の左肩は殆ど動かない。かろうじて腕は動くようだが、腕の上げ下げには敏感で、痛みもある。幼い頃の傷だというのに未だに治らないとは、竜一は思わず苦笑した。
「ごめ、ごめん、痛かった、だろ?」
「ん、大丈夫。別にどうってことないって」
心配そうに、というよりも今にも泣きそうな表情を見せた遼平の頭を竜一は右手で軽く叩いた。そして再び歩き出す。時折、痛みのあった左肩を軽く触れている。
「痛いくせに」
そう小さく悔しそうに呟いて、遼平も竜一の歩幅に合わせて歩き出した。
「ん?」
しばらく歩いていると見慣れた二つの影が竜一の視界に入る。目を細めてその影をじっと見つめた。やはり知っている影だ。竜一のその姿に気がついたのか、遼平が不思議そうに首を傾げた。
「誰か居た?」
「おう、見慣れた奴が二人」
竜一がその二つの影に指を差すと遼平はその影を見つめ、嬉しそうに笑みを浮かべた。
「ホントだ、見慣れた二人」
そういうと足早に遼平は影に向かって走り出した。その姿は小学生が家の前で待っていた母に嬉しそうに向かっていくようにも見える。竜一は小さく息を吐いた。大人っぽいと評判のある遼平でも、ふとした瞬間の表情が子供ようにあどけなく見える時がある。
幼馴染でいるとこれほどまでに遼平のことが分かってしまうのか、そんなことを考えながら遼平の後を追った。
「おーい!」
遼平は二つの影に手を振った。その動作に気がついたのか、二つの影のうち小さい方は遼平に手を振り返す。
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