一章とかつけるけど短編ですから。

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「何って、なーんもしてぇねよ~。ちょっとシャーペン買いに来たら剣吾と会って」  満面の笑みを浮かべながら爽良は茶色のシャーペンを竜一に見せた。爽良はどうやらこだわりがあるらしく、同じ形の柄の違うシャーペンを使用している。竜一や遼平は万年金欠であるため、一つ買うだけでも苦労しているが。 「にしてもお前らも大変だなぁ。こんな時間まで見回り?」 「ホントだよ、全く三芳学園は扱き使うんだから。しかも寮の門限もあるからなー、そろそろ行かねぇと」  空は段々と暗くなってきている。町の街灯も一層明るく光っていた。寮の門限は七時だ。そろそろ帰らなければならない。 「そうだね、そろそろ帰ろうか。さすがに風紀委員長と副委員長が門限守らないのはいけないし」 「じゃあオレもこの不良二人を護衛に帰ろうかな」 「誰が不良だよ」  そんな剣吾と竜一のやり取りを見ている爽良が小さく笑っている。なんだよ、と言いたそうに視線を向けた竜一の右肩を爽良が軽く叩いた。 「んじゃあ俺も行くわー、じゃあな!」  爽良は満面の笑みを浮かべて手を振り、三人に背を向け走り出した。 「んー、なんか爽良、変じゃない?」  遼平は走っている爽良の背中を見つめ、小さく首を傾げた。 「は? 何が? いつも通りだったけど」 「竜はどんどんどん鈍感だから分からないだろうね。ちょっとおかしいなとは思ってたけど」  剣吾もまた、爽良の背中を見つめる。何とも言いがたい雰囲気だった。先程まで一緒に居たから分かる。何か隠しているのだろう。 「誰がどんどんどんどん鈍感なんだよ」 「どんが一つ多い」  何も言い返せなくなった竜一は口を尖らせ、小さな石ころを蹴飛ばした。その姿を見ていたのか、遼平が可愛いと声を上げて竜一に抱きついている。そんな二人を見ずに剣吾は爽良の走り去った後を見つめた。 「何か隠し事してるみたい、だけどな……」  そんな予感がした。
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