一章とかつけるけど短編ですから。

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「お、鳥居発見!」  三段ある階段を軽く飛び越え、鳥居の中に滑り込む。勢い余って何度か前転してしまった。そのせいで肩やら背中が痛い。ズボンの砂埃を叩いて払いながら、爽良は浮かんでいたフランス人形を見つめた。  鳥居の中に入れないフランス人形は恨めしそうに鳥居の前で浮かんでいる。ざまぁみろ、そう小さく呟いて爽良は地面に座った。 「あー、明日筋肉痛だわ。全くやってくれたよ」  大きく息を吐いて、爽良は紺色の空を見つめた。  ――嫌だ、なんて今更だよな。  爽良は何とも言えない気持ちに呆れた。それでも先程からフランス人形が視界にちらついている。  爽良はこの通り、幽霊という類のものが見える。困ったことにそれは生まれた時から一分一秒、この一瞬でさえ見えているのだ。見えている理由はよく分からないが、知り合いの神社で厄払いに行ったところ、もうどうにもならないことが分かった。  幽霊が見えやすいほど幽霊からも見えやすい。そんな理由からこのように幽霊に追い掛け回されたりするのである。容姿が人よりも目立っているのも幽霊が見えるのもすべて親に関係しているというところまでは推測ができた。  しかし、爽良の親は養母であり、実の両親ではない。爽良自身も孤児院育ちだ。そのため、途方に暮れているのである。 「見た目でどうこう言われるのはもう気にしちゃいねぇけど、この体質はどうにかしねぇとなぁ」  普段は魔除けコンタクトというものをつけて寄ってくるものを少なくしているが、不覚にも今日は外してきてしまった。しかし魔除けコンタクトとは随分と魔除けグッズも最先端を走っているなと思う。  作ってくれたのは『妖怪の出る街』で有名な隣町の陰陽師だというが、妙に胡散臭い。爽良自身も正直疑っていたが、つけてからこのように追い駆け回されることが少なくなったため、効果はあるのだろう。  古臭いかびた札は使わないらしい。
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