一章とかつけるけど短編ですから。

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「てめっ、こんのっ、セクハラっ!」 「ちょっ、ごめんて、わざとじゃないのよ~! あ、嘘、ホントだって、竜一ごめん、首、首絞まってる、絞まってる!」 「お前なんかネクタイ斬首の刑に処されろ、首から上がポーンってなってしまえばいい!」 「……お前らとり合えずあいつらの財布も」  茶番を冷めたように見つめていた不良Aは竜一と遼平の二人を指差した。不良Bが面倒臭そうに返事をして二人に近付く。 「た、高梨君、高橋君!」  不良Aの腕から逃げようと夏姫は足をバタバタと動かす。しかし、どんなに体を動かしても首元が絞まるだけだった。このままでは彼らも巻き込んでしまう。それだけは避けたい。  夏姫の声に気が付いたのか、遼平が愛用の木刀を手に取り、向ってきた不良Bの腹に叩き入れた。容赦ないその姿に夏姫は彼を敵に回すのだけは止めておこうと心に決める。  鈍く重い音と不良Bの呻き声が聞こえ、彼は地面に倒れた。遼平は平然とした顔で口笛をヒューっと吹く。  ――うわぁ、木刀振り回しちゃってるよ。  遼平は肩を回しながら楽しそうに笑みを浮かべている。聞いた話では竜一と遼平は中学生の時、不良だったらしい。と言っても本人らは少しやんちゃだっただけだから、と言っていた。やんちゃにしては木刀を振り回すなど元気がよすぎるのではないだろうか。  しかし、三芳学園の治安維持のため理事長から特別に許されている。おいたの過ぎた生徒は容赦なく、二人にボコボコにされるのである。やはり、風紀委員会は敵に回さないほうがいい。夏姫はじたばたと体を動かせつつ、心底そう思った。それに加え、三芳学園は主に金持ちや頭のいい生徒が集まっている。  そのため夏姫のように外部の人間の標的になってしまうことが多い。風紀委員会は行内ともに校外も見回り、そういう輩を撃退しているのだ。 「あれだよね、これって暴れていいんだよな?」  遼平の眼が子供の様に無邪気に光る。こういう表情の遼平は誰かに悪戯を仕掛ける時だ。妙に子供っぽい表情で嫌な予感がする。味方であるはずの遼平だが、どうしても敵のように見える。夏姫の体に悪寒が走った。 「あぁ、いいよ。久し振りだから体鈍ってなきゃといいけどね」  竜一もまた何処からかスラリと木刀を取り出す。そして軽く遼平の木刀を叩いた。
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